(写真:筆者撮影、東京都で一番西のむささびの出る野球場)
“「コンビニにDHC商品置かないで」ウェブ署名に約5万人が賛同。“という見出しを見た。ネットニュースでたまに目にするDHCという企業、筆者はこの会社の業務内容をあまりよくわかっていなかった。
会社のウェブサイトで事業内容を見たところ、創業は1972年、現在の𠮷田嘉明氏(代表取締役会長・CEO)が大学の研究室を相手に洋書の翻訳委託業を行う大学翻訳センター(Daigaku Honyaku Center)を始め、後1975年に株式会社組織になったという。
80年代に入り、DHCの事業内容に「化粧品製造販売をはじめ基礎化粧品の通信販売事業」が加わり、「DHCオリーブバージンオイル」という商品は、流行に疎い筆者でさえその名前を知っている。
商品の名前は知っていても会社名は今ひとつよくわからなかったが、ウェブサイトをみてわかったことは健康食品の取扱では最大手に分類される企業(美容、健康食品の通販売上も)だ。
設立当初からの翻訳・通訳業をはじめ、医薬品・遺伝子、アパレル・インナーウェア、ビール、リゾート、ヘリコプター、出版、教育や介護、ペットまで幅広く事業を展開し、研究から、製造、発送、アフターフォロー、店頭販売に至るまで、すべての流れを自社運営しているとのことである。
昨今、2021年6月には通信販売会員数15,382,661人を突破したと同社のウェブサイトにて発表されている。増加傾向、通信販売という性質も相まってユーザ基盤もかなり強固であると思われる。
さて、ネットなどのニュース記事でDHCという文字は度々見かけるものの、なぜかヘイトスピーチ関連の話題が多く、筆者がこれに反応したのも事実である。ツイッターのタグといわれる見出しのようなものには「#差別企業DHCの商品は買いません」とか、これまでも「DHCと包括連携協定を結んでいる複数の自治体が、協定の凍結や解除」などの記事を目にしていたことは確かだ。
今朝、週刊金曜日の記事で、“「コンビニにDHC商品置かないで」ウェブ署名に約5万人が賛同。“という見出しが目に入った。記事の要旨は、同社会長の𠮷田嘉明氏の「在日コリアンへの差別発言に関連して、市民有志が同社商品のコンビニからの撤去と取引中止を求める署名活動を5月から実施。集まった約5万筆の署名を、大手コンビニ4社へ提出した。」という旨の内容だ。
記事によるとこの署名の責任者は清義明氏、これまでも反差別運動に精力的に取り組んできたとの由。ネット署名ウェブサイトchange.orgというものを利用し、5月12日に署名活動をスタートさせ、6月24日には報道関係者に事前告知し、署名は大手コンビニの本社へと直接提出することを計画。
24日の前日まで集まった5万2353筆を東京都内にあるセブン・イレブン、ローソン、ファミリーマートの各本社や、ミニストップの親会社である千葉市のイオン本社にも持参したとの由(提出日は記入されていない)。
DHCに対しての商品撤去などを含めたいわゆる「不買運動」のような行動は以前から行われており、並行してDHCと包括連携協定を結んでいる複数の自治体が、協定の凍結や解除、または見直しを含む検討に入っているなど、一部のメディア・ニュースでは度々伝えられていた。
しかしながら、今回の騒動の原因の一つは、DHC公式オンライショップに掲載された「ヤケクソくじについて」という、通販サイト上のキャンペーンメッセージ(2020年11月付)で、ライバル企業であるサントリーに言及し「サントリーのCM起用タレントはほぼ全員がコリアン系の日本人です。
そのためネットではチョントリーと揶揄されているようです。DHCは起用タレントをはじめ、すべてが純粋な日本人です。」というものである。
このメッセージは複数のSNSで引用され、Twitter上などでは差別的であるとして批判され「#差別企業DHCの商品は買いません」とのハッシュタグもトレンド入りした。2021年4月2日の衆議院法務委員会では自民党議員の質問に上川法務大臣が答弁し、「企業にはむしろ率先してヘイトスピーチを含めたあらゆる差別・偏見をなくして、人権に配慮した行動をとるということについて考えて、深く行動していくことが大事」と答弁しするなどの波紋を呼んだ。
そしてこれに追い打ちをかけたのがNHK。一連の経緯を4月9日に「おはよう日本」という朝の番組で紹介。これに対し、DHCの𠮷田嘉明氏は改めて「NHKは日本の敵です。不要です。つぶしましょう」などとする声明を公開した。
同会長は以前にもサイト上の会社概要にあった会長メッセージ(2016年2月付)では、「似非日本人」などという表現を用いて反論し、これも「ヘイトスピーチ」であると批判を集めたことがある。
DHCが2021年6月には通信販売会員数15,382,661人を突破したと発表しているように、「ヘイトスピーチ企業」などの社会的な批判を受けながらも着実にユーザーを増やしているとなると、基本的には通信販売のDHC公式オンライショップでのコア・ユーザー会員向けの発言は、強固な「ユーザーグループ」を形成することに寄与する場合もある。
会員を強固に結びつけるためこういった強めの発言をすることは社会的に認識されつつあることで、良いか悪いかは別として、思想や宗教、政治にもみられる一種の方法である。NHK運動しかり、コロナは風邪しかり、右だの左だのもである。
しかし、それがたとえサークル的なネットワークの内側にあっても、現代社会は壁がとても薄く、時には壁自体がない場合もある。過度に他人の考えに干渉したり、常に争いの種を探し求めるような不寛容なストレス社会の悪循環への燃料となってしまうことも少なくない。
筆者は日頃から「他人の境遇を理解し、尊重し、人種をひとくくりにして排除してはならない」と主張している。特にビジネスや政治で人集めのために何かを一律に批判することは、多様化する健全な社会づくりに相反するのでやめて欲しい。しっかりとしたシェルターをつくってそのなかでやるべきだ。
さて、DHCの発足は、翻訳であるが、英、独、仏〜中〜韓朝〜アラビア語他44カ国語に対応するほど国際的で、1995年米国や台湾の現地法人を設立し、2002年には韓国のDHC Korea, Inc.を設立。2003年には中国shanghai DHC Commerce Co., Ltd.設立。
その後、英国や2016年から香港でも事業展開をしている。他にも海外代理店展開シンガポール〜アラブ首長国連邦、ロシアなど11カ国に海外代理店を展開しており、グローバル感覚は「外国人嫌い」のような単純なものでないことが窺われる。
一方、外国の反応だが、筆者が注目したのは韓国メディア。この中で注目した韓国のメディア記事Wow!Koreaには“「嫌韓助長」DHC、製品の撤去求める5万人分の署名を日本市民団体がコンビニ各社に提出”という見出しで本件「コンビニにDHC商品置かないで」という運動を取り上げている。
Wow!Koreaの記事はきわめて客観的な報じ方で、「韓国メディア『韓国日報』は、日本メディア『朝日新聞』などの記事を引用し、日本の市民団体『DHCとの取引の停止をコンビニ各社に求める会』がオンライン署名サイトを〜」など主張の主要な部分を引用して伝えている。
さらに、「DHCは、消費者や被差別当事者などへの公式の見解は一切なく、この批判を真摯に受けとめているようには全く見えない」などとするだけで、報じる側の主張は加えられていない。そして、記事の締めくくりとして「しかし、韓国でも販売されているDHC製品の人気は根強い。」と綴ってある。
筆者がこれらWow!Koreaの記事から感じとれたものとは・・・、何十年にもわたり深い傷を残す歴史は一言では片付けられるものではないけれど、憎悪感情は永遠に「負」しか生み出さない。傷を負った当事者の憎悪は人として自然な感情であり計り知れないけれど、果たして当事者はどれくらい存在するのだろうか?当事者でない人の憎悪感情は一体どこから生まれてくるのか?
ちょっとだけ思考を変えてみてはどうだろうか?自分や自分たちの子孫が幸せに暮らすために、負の鎖を断ち切る勇気を持って欲しい。当事者でない限り、憎悪感情というのはたいてい外から煽られて生まれるものだ。世の中には、その憎悪感情が大好物な人たちがいると想像してみて欲しい。
彼等は憎悪に価値を見つけ出し、さらに憎悪を煽るのだ。憎悪は相対する憎悪を呼び、永遠に負の鎖にとりつかれる。そんな人生はまっぴらだ。私達はエキストラじゃない。憎悪好きの人間のためにただ働きさせられるなんてまっぴらだ。憎悪は当事者が解決するしかない(勿論、サポートやケアは有るべきだ)自分や自分たちの子孫が幸せになる道をさがして欲しいと思う。
ところで、他人の意見を尊重しながらバランスを取るのは高度な技だが、筆者も、発言者であるDHCの𠮷田嘉明氏の本音をうかがいたい。「DHCは、消費者や被差別当事者などへの公式の見解は一切なく、この批判を真摯に受けとめているようには全く見えない」というWow!Koreaの引用部分、そして「しかし、韓国でも販売されているDHC製品の人気は根強い。」というメッセージともうけとれる言葉は重い。
野球でいうと3アウトチェンジなのか・・・いやしていない。1回の表2アウト1ボールである。社会的責任を課せられた企業はまだなにも主張をしていない。
韓国のメディア、そして筆者も含め、実況解説者であればまだ1回の表2アウト1ボールからの第二球目を伝え始めたいところ。バッターボックスに4番、最強打者の𠮷田嘉明氏の登場する打席を待っている。