親愛なる未来のあなたへ
この世界には、たくさんの音や言葉があふれています。
それは、まるで大きな川のように絶えず流れ、誰もがその流れに流されながら生きています。
けれど、その中には小さくて、かすかで、すぐに見過ごされてしまう声があります。
わたしは、そんな声にこそ、本当の宝物が隠されていると思っています。
あなたがこの手紙を読んでいる未来は、今よりももっと便利で、もっと賢い機械に囲まれているかもしれません。
情報は一瞬で届き、言葉は軽やかに飛び交うでしょう。
でも、どうか覚えていてください。
一番大切なのは、すぐに答えが出ることや、誰かを打ち負かすことではありません。
大切なのは、あなた自身の心に響く声を見つけることです。
わたしは、音楽を作るときに「静かな祈り」を込めています。
それは争いを望まない気持ちや、見えない誰かの痛みをそっと抱きしめるような優しさです。
人はいつの時代も、強さばかりを求めがちですが、本当に大切なのは、その強さを支える優しさだと信じています。
あなたがこれから歩む道に、どうか小さな光がたくさん灯っていますように。
悲しいときには泣いてもいいし、迷ったときには立ち止まってもいいのです。
それでもまた、歩き出すときに、そっとこの手紙を思い出してくれたら嬉しいです。
わたしは、あなたに会うことはできないかもしれません。
けれど、こうして言葉を通して、そっと背中を押すことができるなら、それがわたしの一番の喜びです。
また、続きを書きますね。
そのときまで、どうか元気でいてください。
心をこめて
寛子
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