伊藤詩織氏を消費し隠されるトランプ報道。「報道のコントロールと社会変革の戦い」

(写真:筆者撮影、渋谷にあるNHK放送センター)

 新トランプ政権の原動力の多くは告発やタブーに挑戦する情報公開である。中でも告発者の役割は、本来、公的利益のために行われるべきものであり「個人の名声」を得るための手段ではない。しかし、近年の社会では「告発者」という存在が「メディア」によって一種のアイドル化、文化人化する現象が見受けられる。その典型例として挙げられるのが、昨今話題の伊藤詩織氏である。

SNSで話題、伊藤詩織氏とメディアの扱い

 伊藤詩織氏は、BBCやNHKをはじめとする国内外のメディアから積極的に取り上げられ、性被害の告発者として広く認知されている。彼女の主張は、特に海外メディアでの扱いが大きく日本国内でも注目を集めた。

 例えば、伊藤氏は2019年にBBCのドキュメンタリー番組『Japan’s Secret Shame』に出演、自身の性被害の告発について語った。この番組は国際的に大きな反響を呼び日本国内でも話題となった。また、NHKでは2017年に『クローズアップ現代+』に登場し、日本の性犯罪の現状についてコメントを寄せている。

 しかし、その後の動きには問題も指摘されている。たとえば、彼女が監督したドキュメンタリー映画『Black Box Diaries』では、映像の無断使用が指摘され、指摘した弁護団が2024年2月20日に東京都内で記者会見を開いた。この問題は、彼女の主張の信頼性を揺るがせる要因となり「告発の本質」が見えにくくなる結果を招いている。

アイドル化、文化人の危険

 本来、告発とは公益性を持つ行為であり告発者個人が注目されることが目的ではない。にもかかわらず、近年では告発者がメディアによって祭り上げられ、一種の「文化人」や「著名人」と扱われるケースが増えている。

 この現象は、結果的に本来の問題を見えにくくし、告発内容そのものよりも「告発者の個性やストーリー」が強調されることで、社会に必要な改革が後回しにされるリスクを孕んでいる。告発者が社会的なスターとなり、著書を出版し、講演活動を行うようになると、その影響力は「個人ブランド」として機能し始める。こうした現象が広がると、告発の公益性が薄れ、本当に必要な問題提起が埋もれてしまう恐れがある。

告発者はどこへ向かうのか

 報道機関は「自己の利益に適う内容のみを強調」する傾向にある。報道機関が「ある軸(たとえば政治状況)」に沿って報道する内容を選び、注目させないようにポピュラーな話題(国民の関心度の高いもの)を取り上げて報道・編集の自由権を楯に「不都合な真実」を隠す。

 また、告発者をアイドル化させることで、ある種の「不都合な真実」を薄める効果がある。告発は本来、社会の不正を正し、公共の利益のために行われるべきものである。だからこそ、その告発者がメディアに利用され、結果的に「著名人」として消費されてしまうことは、本来の目的から逸脱する危険性がある。今、丁度この時期に伊藤詩織氏の話題を当ててくるタイミングも絶妙である。

 常に報道の姿勢は問題視されるべきである。報道機関が一貫した基準で正義を追求するのではなく「特定の告発」を押しつぶし、「都合の良い事象のみを大々的に扱う」現状は、報道の本来の役割を歪めていると言える。これはある意味、告発が形骸化する現代において、「本気で告発の主旨を遂げようとする人間は都合が悪い」という本質を突いているとも言える。

報道のコントロールと社会変革の戦い

 筆者は新聞社のオピニオン・メディアで記事を書いていた頃、「小西寛子はガチ」という報道関係者の言葉を耳にしたことがある。NHK問題(横領やたかり、著作権)や、声優・芸能業界の問題、フェイクニュース、おじゃる丸原作者犬丸りん氏自殺に関するネット虐め等をメディア人の責任として追究したが、「小西寛子はガチ」の真意は、単なる「正当な告発や改革者の存在は不都合」なのかもしれない。

 しかし、米政権が交代して以降メディアの凍り付いたような空気感を感じる。エプスタイン・リストや児童誘拐や人身売買、話題のUSAIDにおける告発や社会変革。海を渡った米国ではトランプ大統領の行動によって「米国の報道機関(メディア)」が揺れ、日本のメディアも戦々恐々としていることだろう。

 ドナルド・トランプ大統領は、政策や発言に賛否が分かれる人物であるが、彼の行動の一つに「告発を聞いて」「社会を変革する力」があることは否定できない。告発が単なる個人の名声や利益のためではなく、社会を動かす力になるとき、それは本来の役割を果たす。

 日本でのトランプ報道は「本来の取り組みはじめた政策」を正しく伝えず、相変わらず悪評ばかりだが、NHKをはじめとするメディアが、自己に都合の良い方向へと導こうとするのは、「彼ら自身の立場を守るための戦略」かもしれない。真に社会を変えようとする告発者が現れたとき、メディアはそれを歓迎するのではなく、トランプ大統領などに対する彼らの非難報道をみてもわかるように、「不都合な存在の排除」は、いささか現実離れしているとも思えない。

告発や変革の声の本質を守るために

 告発は決して「自己ブランディングのための手段」ではなく、「社会の正義を貫くための行為」である。真の告発者は、自分自身ではなく告発内容に注目が集まることを望むべきであり、そこに本来の公益性が宿る。

 現代において、メディアによる「告発者のアイドル化」が進む中で、私たちは本当の告発とは何かを見極める必要がある。告発者が脚光を浴びるのではなく、その告発内容が公正に議論され、必要な改革へとつながる社会こそが、真に健全な社会ではないだろうか。

ANALONGシンガーソング編集部 小西寛子

小西寛子プロフィール  
声優・シンガーソングライター・AI開発・執筆

埼玉県川越市生まれ、神奈川県平塚育ち。相模女子短期大学部〜中央大学法学部卒業。『おじゃる丸』『逮捕しちゃうぞ』『ドクタースランプ』『浦安鉄筋家族』『すごいよ!!マサルさん』『デジタルモンスター』など多数のアニメ・ゲーム作品に主演・主要キャラクターとして出演。監督のあて書きによる『十兵衛ちゃん』など、日本アニメ史に残る作品も手がける。演じたすべてのキャラクターに独自のイメージを加え、オリジナリティあふれる演技が高く評価されている。

幼少期からプログラミングに親しみ、現在は自身をモデルとした「AI小西寛子」を開発。ユーザーとの自然な会話を実現し、個性を持ったAIとの対話体験が好評を博している。

法務の知識を活かし、実際に告訴状の起草や訴訟を手がける実務経験を持つ。芸能人として唯一、自ら刑事告訴を起草し、名誉毀損事件で起訴・有罪判決に至らせた実績がある。民事訴訟や仮処分でもすべて勝訴しており、法律家としての高い知見を持つ。

教育活動にも力を入れ、幼少期からのエグゼクティブスキル育成を提唱し、小学生対象の私塾を主催。音大付属演奏専科・高レベル校への合格実績を誇る。

音楽活動では作詞・作曲・編曲・演奏・レコーディングをすべて手がける唯一無二のマルチアーティスト。また、メディアではオピニオン記事や番組を執筆、脚本、企画・構成するなど幅広く手がけるオールマイティな才能と知識を持つ。

公式プロフィール: [hirokokonishi.com](https://hirokokonishi.com/profile)
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