(イメージ写真:テーマ「平等・アクセス可能・革新」作:ノア)
日本では高額療養費制度の見直し(負担上限額引き上げ)が議論されており、一部の負担増が検討されています。これに対し、島根県知事が「国家的殺人未遂」とまで批判するほどの問題という表現で批判するなどのニュースになっています。
しかし、筆者がこの騒動で思うことは、この議論の機会において、ここで大切なのは高度な医療や最先端の医療技術(高額医療も含めた)「人類が到達した医療技術をどのように活かしていくか」などの根本的な考え方も含め議論していかないと駄目だと思います。
人類の進歩と医療技術の責任
さて、医学の進歩により、かつて助からなかった命が救える時代になりました。「人間は高額医療を提供すれば人類を生かせる可能性のある方法までたどり着いた」のです。これは単なる技術的な進歩ではなく、「ここまでできるのであれば、ここまでやるべきだ!」という人類の責任でもあります。
でも、いくら高額とはいえ「特別なもの」ではなく、そもそも人命を助ける「医療」ですから、「当然のもの」として認識されるべきです。こうした視点を持つことで、「技術はあるのに、お金がない人だけが助からない」ような状況がどれほど不合理かを理解できるのではないでしょうか。
誰もが安心できる医療制度を
近代化した世の中では、貯蓄の少ない人でも、大きな病気の治療を安心して受けられる社会を守ることは、国の大切な役割です。それを「高所得者と低所得者の線引き」や「ボーダーライン」で差をつけることは、技術の進歩に逆行することになりませんか。「お金がある人だけが助かる」「お金がないから治療を諦める」・・・
こうした社会は、本来の憲法から来る福祉の理念に反しています。もし国が本当に持続可能な医療制度を目指すならば、負担を増やすことよりも、医療を効率化し、より広く公平に提供する方法を考えるべきではないでしょうか。
昨今問題の外国人の高額療養費制度短期利用等の対策
ただし、そんな負担の公平さをうたっても、昨今ニュースでも話題になっている外国人等の短期滞在者の「高額療養(医療)費の制度の悪用」も問題になっており、これら制度の矛盾や問題を防ぐために、短期滞在の外国人への制度適用要件を厳格化するなどの法律要件を設けるなど、持続可能な制度を築くためには、これら要件の優先順位を明確にし、本当に必要な人々に確実に医療を届ける仕組みが大切です。
AI等の新しい技術への投資とコスト削減の可能性
高齢化社会で膨れ上がる医療費の増大は避けられませんが、AIやロボット技術を活用すれば、医療費を抑えながら質の高い医療を提供できる可能性があります。「本記事のアイキャッチ写真のような未来の医療」とまでは行かなくとも、医療の進化もAIの進化も「先行投資」だと考えれば、今は負担が大きくても将来的にはすべての人が低コストで恩恵を受けられるようになるはずです。そのためにも、短期的なコスト論ではなく、長期的な視野で医療の未来を考えていくことが大切だと思うのです。
高額療養費負担増の議論の背景にあるもの
一方、余談ではありますが、今回の制度見直しの議論が、「税収が減れば、こうした福祉制度を維持できないから負担を国民に」という政府・国家のメッセージではないかとも考えられます。つまり、「これからは国民一人ひとりが負担を増やさなければならない」という前提を、既成事実化しようとしているのではないでしょうか。だからこそ、単に反発するだけではなく、「どうすればバランスの取れた、持続可能な福祉制度を作れるのか」を国民が参加し、一緒に考えていくことが重要になります。
未来に向けて議論を進めるのは国民
技術がここまで進んでいるのだから、それを活かさないのは「選択の問題」であり、「コストの問題」ではありません。医療の発展を公平に活かすことこそが、国の役割であり、私たちが文明社会に生きる意味でもあります。国民がこの現実を想像し、理解し、バランスを取ることで、より良い医療制度が築かれます。今こそ、未来を見据えた政策を考え、闇雲な負担増(税負担)を未然に防ぎ、誰もが安心して生きられる社会を実現していきたいですね。