80年前の8月6日、広島の空は一瞬で奪われました。原子爆弾の閃光が街を焼き、数えきれない命が失われた――その記憶は、今も私たちの心の奥に息づいていると感じます。
でも、広島は止まりませんでした。京橋川の静かな流れのように、傷を癒しながら、少しずつ、平和への願いを紡いできた。私は今年、戦後80年の夏(8月1日)という節目に、EP『遙カノ島』を発表しました。その中の一曲「みゆき橋」は、広島の夏に、そっと耳を澄ませていただきたい歌です。
舞台となった「みゆき橋」は、広島市中区、京橋川に架かる小さな橋。原爆ドームの影を川面に映すこの場所には、静かに、けれど確かに、被爆者の記憶と平和への願いが流れ続けています。だから、広島の人々、日本中の人、世界、そして私にとってこの橋は、特別な存在です。
「みゆき橋は、過去の悲しみを抱きしめ、未来への希望を運ぶタイムマシンのよう」
——私は、そう感じています。
「みゆき橋」は、ただ過去を悼むための歌ではありません。傷ついた心にそっと寄り添い、橋のたもとで誰かを待つように、未来への一歩を導けたらと願って作りました。メロディには、70年代のアナログサウンドを意識しています。フォークロックの温もりと、私の吹くフルートで浮遊感を重ねました。私のバンドメンバーの協力を経て、作詞・作曲・演奏・プロデュース、すべて私が一人で手がけたこの曲には、川面に揺れる光、遠くの鐘の音、風に揺れる木々のささやき…そんな情景が息づいています。
「あなたにとって、平和とはどんな場所ですか?」
そう問いかけるように、私はこの曲を歌いました。
みゆき橋の上に立つたび、人はまるで誰かを待っているような感覚になります。静かに、けれど深く、心に届く声でありたいと思っています。
2025年、戦後80年を迎えた日本。広島、長崎、沖縄、東京…街の片隅には、今も「戦争の記憶」が静かに生きています。私のEP『遙カノ島』には、そうした「声なき人々の記憶」をそっとすくい上げる6つの歌を収めました。
「政治や思想のために歌うつもりはありません。ただ、心から心へ、寄り添うような歌を届けたい」
その想いは、川の流れのようにまっすぐで、嘘がありません。この時期になると毎年、平和をテーマにした音楽が多く流れます。メディアが取り上げる原爆関連の楽曲たちーー。でも『遙カノ島』に収めた私の歌は、そうした商業的な流れから少し離れています。話題のためではなく、心の中で語りかけるように、静かに生まれました。メディアの脚本には流されない。声なき人たちの記憶を、ただ静かに歌いたかった」
その想いこそが、「みゆき橋」という歌を特別にしているのだと思います。
被爆の歴史を大きな声で叫ぶのではなく、日常にある小さな平和――たとえば、橋を渡る子どもたちの笑い声や、夕暮れの川面に映る空の色――そういった景色に、私は祈りを託しました。
8月6日に「みゆき橋」を聴いていただくことは、過去を悼むだけではありません。未来への希望を、そっと手に取るような時間になるかもしれません。
この曲は、戦争の記憶と向き合いながら、それでも前を向こうとする人々の力強さを描いています。そして、私たちが日常の中で見過ごしてしまいそうな「小さな平和のかけら」を、優しく照らしてくれると信じています。
「みゆき橋は、ただの橋ではない・・・。
誰かを見送った橋であり、帰ってこなかった誰かを待ち続けた場所。
そして今も、何も知らないふりをして歩くわたしたちを
優しく、しかし確かに見つめている。
私の声が、広島の夏の風や、川のせせらぎのように、あなたの心に届きますように。8月6日、静かなひとときの中で、「みゆき橋」に耳を澄ませてください。きっと、あなたの心の中に、新しい平和の物語が生まれるはずです。
EP『遙カノ島』は、8月1日に配信リリースされました。公式サイトでは、全曲の試聴や、物語の背景を知っていただけます。(https://hirokokonishi.com/harukanoshima-release-2025/)制作秘話は(https://hirokokonishi.com/miyuki-bridge-story/)
「みゆき橋」を通して、戦後80年の日本に、小さな“心の橋”を架けられたなら――今回も、わたしは自分の強い思い入れのある作品として、作詞、作曲、演奏からレコーディングは(ベース、ドラム等はメンバー)自身ででさせていただきました。
それが、私にとっての「平和」なのです。
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本年、令和7年は、戦後より80年という節目の年にあたります。
このたび、声優・シンガーソングライターとして活動を続けてまいりました小西寛子が、日本各地の記憶と風景を辿る音楽作品『遙カノ島』を世に送り出すに際し、皆様からの心温まるメッセージを広く募集いたします。詳しくは応募ページへ
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