「5月、芍薬と雨とこころの散歩道〜季節の花と心を整える暮らし」
©️小西寛子2025

「5月、芍薬と雨とこころの散歩道〜季節の花と心を整える暮らし」

5月の初め、空を覆う雨に包まれながら、ひとしずくひとしずくが静かに大地を潤しています。そんな中、七輪の花が咲いた庭の芍薬が、雨の音とともに私の心に優しく響いてきました。花が毎年咲くように、心もまた季節の流れに寄り添いながら、少しずつ調和していきます。今回は、季節の花が教えてくれる「心を整える暮らし」の大切さを、雨の日にふと思うひとときのような静けさを感じながら、皆さんと共に歩んでいきたいと思います。

 5月2日。
昨日の陽ざしから一転して、今日はしっとり雨の一日。
静かに降り出した空を眺めながら、そっとわが家の庭の鉢に手を伸ばしました。
今年もきちんと、変わらずに咲いてくれてありがとう!そんな気持ちで、一鉢から七輪の花を摘み、部屋に飾ります。

 芍薬の花は、歌や役柄に似ています。
一瞬のために、じっと静かに力を蓄え、
そしてある時、ふわりと花ひらく。
誰にも気づかれない時間があって、ようやく届けられる一音、一言。

 咲いている時間はほんの短いのに、
その一瞬にすべてをかけている姿が、
どこかで役を演じ、また歌を奏でる自分と重なって見えました。

 毎年、この時期になると必ず学ばされます。
「待つこと」もまた、愛のかたちだと。
目には見えない、でも確かにある温度。
人と人のあいだには、静かに満ちていく時間があることを、花がそっと教えてくれるのです。

 そして、こんな雨の日には、からだもこころも少し重たくなりがち。
東洋の知恵では、この湿気の季節に「脾」や「気」が弱まりやすいとされています。
そんな時、私は漢方に助けてもらいます。

 たとえば、陳皮、みかんの皮を乾かしたもの。
あたたかいお湯に浮かべて、
気の巡りがふんわりと解けていくような感覚があります。

 実は芍薬も、漢方の世界ではとても大切な存在。
「芍薬甘草湯」などに用いられ、筋肉の緊張をゆるめたり、女性の体調を整えたり。
内から美しさを整えてくれる花でもあるのです。

 ・・・花は、飾るだけじゃなく、寄り添ってくれるんですね。

 今日の写真は、絵を描くために撮っていたものの中から一枚を。
光がやわらかく滲んで、まるで芍薬の息づかいが聴こえてくるようでした。
雨音と花の香りに包まれながら、
ひとつぶの愛が、静かに心に降ってきた午前のひとときでした。

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