5月の初め、空を覆う雨に包まれながら、ひとしずくひとしずくが静かに大地を潤しています。そんな中、七輪の花が咲いた庭の芍薬が、雨の音とともに私の心に優しく響いてきました。花が毎年咲くように、心もまた季節の流れに寄り添いながら、少しずつ調和していきます。今回は、季節の花が教えてくれる「心を整える暮らし」の大切さを、雨の日にふと思うひとときのような静けさを感じながら、皆さんと共に歩んでいきたいと思います。
5月2日。 昨日の陽ざしから一転して、今日はしっとり雨の一日。 静かに降り出した空を眺めながら、そっとわが家の庭の鉢に手を伸ばしました。 今年もきちんと、変わらずに咲いてくれてありがとう!そんな気持ちで、一鉢から七輪の花を摘み、部屋に飾ります。
芍薬の花は、歌や役柄に似ています。 一瞬のために、じっと静かに力を蓄え、 そしてある時、ふわりと花ひらく。 誰にも気づかれない時間があって、ようやく届けられる一音、一言。
咲いている時間はほんの短いのに、 その一瞬にすべてをかけている姿が、 どこかで役を演じ、また歌を奏でる自分と重なって見えました。
毎年、この時期になると必ず学ばされます。 「待つこと」もまた、愛のかたちだと。 目には見えない、でも確かにある温度。 人と人のあいだには、静かに満ちていく時間があることを、花がそっと教えてくれるのです。
そして、こんな雨の日には、からだもこころも少し重たくなりがち。 東洋の知恵では、この湿気の季節に「脾」や「気」が弱まりやすいとされています。 そんな時、私は漢方に助けてもらいます。
たとえば、陳皮、みかんの皮を乾かしたもの。 あたたかいお湯に浮かべて、 気の巡りがふんわりと解けていくような感覚があります。
実は芍薬も、漢方の世界ではとても大切な存在。 「芍薬甘草湯」などに用いられ、筋肉の緊張をゆるめたり、女性の体調を整えたり。 内から美しさを整えてくれる花でもあるのです。
・・・花は、飾るだけじゃなく、寄り添ってくれるんですね。
今日の写真は、絵を描くために撮っていたものの中から一枚を。 光がやわらかく滲んで、まるで芍薬の息づかいが聴こえてくるようでした。 雨音と花の香りに包まれながら、 ひとつぶの愛が、静かに心に降ってきた午前のひとときでした。