秋の山道には、ふいに記憶の底から立ちのぼってくる色がある。
新潟県妙高市、燕温泉へ向かう山あいの道。そこから赤倉を過ぎ、長野県境まで少し足をのばした杉ノ原から笹ヶ峰へ続く道は、秋になると、木々が黄金色にほどけるように染まる。もう10年くらい前、オートバイでこのあたりを走ったとき、視界いっぱいに広がる黄葉(こうよう・おうよう)があまりに美しくて、ただ「紅葉」と呼ぶには足りない気がした。山が光っている、というほうが近い。

燕温泉と聞くと、野趣ある露天風呂を思い浮かべる人も多い。実際、燕温泉には温泉街からきつい登りが多いが、徒歩で行ける「黄金の湯」や「河原の湯」があり、妙高観光局や新潟県観光協会でも紹介されている。けれども、女性の秋旅としては、無理に露天風呂を目指さなくてもいい。少し歩いて、足湯に浸かって、あとは宿に戻って温泉と食事をゆっくり楽しむ。そんな旅のほうが、秋の妙高には似合う気がする。
燕温泉は、妙高山の登山口としても知られる山あいの温泉地だ。環境省の国立公園紹介でも、赤倉・関・燕温泉をめぐる温泉コースの中で、燕温泉街から徒歩圏に野天風呂があることが案内されている。だから本格的に歩く人にも、少しだけ山の空気を味わいたい人にも、入口が広い。
今回の旅の案内は、燕温泉を「泊まる場所」として考えたい。湯の気配がある宿に入り、夕方は部屋で少し休んで、夜は地元の食材を使った料理を楽しむ。

妙高高原温泉郷には、赤倉、池の平、関、燕など複数の温泉地があり、新潟県旅館ホテル組合も、妙高の郷土料理や山里の味を紹介している。秋の旅なら、紅葉だけでなく、米、山菜、きのこ、日本海の魚、地酒まで含めて“妙高の時間”になる。
翌日は、笹ヶ峰へどうぞ。
笹ヶ峰高原は、標高約1300メートルに広がる高原で、牧場、清水、池、森が点在する。妙高市は、笹ヶ峰高原について「牛が放牧されている笹ヶ峰牧場」や清水ヶ池、乙見湖、ドイツトウヒ林などをめぐるコースを紹介しており、秋には渓谷の紅葉も楽しめるとしている。新潟県観光協会も、笹ヶ峰高原を紅葉スポットとして案内している。

ちなみに、今回の記事用に写真を探したが、最近のは無く、筆者の撮影した写真はもう10年くらい経つものですが(7月前半の燕温泉、10月近い笹ヶ峰)風景は変わらないので掲載します。
さて、ここで入れたいのが、筆者の写真にもありますが、笹ヶ峰グリーンハウス。妙高観光局の案内では、2階レストランで新潟県産牛のステーキが名物とされている。
新潟県の案内にも、笹ヶ峰高原のグリーンハウスでは、雄大な自然を眺めながら名物「くびき牛のステーキ」が味わえるとある。山道を抜けて、紅葉を見て、牧場のそばでステーキを食べる。これは、温泉旅行のコースに入れるにはかなり強い“食の記憶”になる。
ただし、笹ヶ峰は季節営業や道路状況の確認が必要な場所でもあります。グリーンハウスも年度ごとに営業開始・終了のお知らせが出ており、過去には10月末で営業終了となった年度もあります。秋に行くなら、出発前に最新の営業日、道路情報、天候を確認しておきたいですね。よくある旅の記事、「行けそう」「開いていそう」を断定しないで、確認できる範囲を調べて行くのもよいですね。

さて、もう少し秘境感を足すなら、3日目には長野・新潟県境の秋山郷や切明温泉を訪れるのもよいです。切明温泉は、河原を掘ると温泉が湧き出す場所として知られ、長野県の広報資料でも、秋の紅葉に抱かれながら湯につかる場所として紹介されています。燕温泉を「泊まってのんびりする温泉」、笹ヶ峰を「黄金色の道とステーキの高原」、秋山郷を「さらに奥へ行く秘境の余韻」として並べると、3日で秋を満喫できるでしょう。
この旅のよさは、派手な観光地を次々に回ることではありません。
車でも、オートバイでも、バスの旅でも、山道のカーブをひとつ越えるたびに、木々の色が変わる。温泉街に着いたら、足だけ湯に入れて、体を少しゆるめる。宿では無理をせず、温泉と夕食を楽しむ。翌日は笹ヶ峰まで走り、黄金色の森と牧場を眺め、ステーキを食べる。余裕があれば、秋山郷まで足をのばす。
秋の国内旅行は、遠くへ行くことよりも、季節の中へ深く入ることなのかもしれません。燕温泉と笹ヶ峰の旅は、その感覚を思い出させてくれると思います。

お薦めの旅の組み立て案
1日目は、妙高高原方面へ入り、関、燕温泉周辺を散策。露天風呂を主目的にせず、足湯や短いハイキング、宿での温泉と夕食を中心にする。
2日目は、笹ヶ峰高原へ。紅葉の道、牧場、清水ヶ池や乙見湖周辺を無理のない範囲で楽しみ、笹ヶ峰グリーンハウスの営業が合えばステーキを昼食にするのも最高です。
時間と体力があれば、2日目か3日目に秋山郷・切明温泉へ。河原の湯や秘境の紅葉は魅力的だが、道路・天候・営業状況の確認をしてからがよいです。
資料・出典
- 新潟県観光協会「燕温泉『黄金の湯』『河原の湯』」
- 妙高観光局「燕温泉『河原の湯』OPENのお知らせ」
- 環境省「妙高戸隠連山国立公園 赤倉・燕・関温泉コース」
- 新潟県旅館ホテル組合「妙高高原温泉郷/にいがたお宿の晩ごはん」
- 妙高市「妙高の癒しの森」
- 新潟県観光協会「笹ヶ峰高原」
- 妙高観光局「笹ヶ峰グリーンハウス」
- 新潟県「妙高山麓県民の森グリーンハウス営業開始のお知らせ」
- 新潟県「妙高山麓県民の森グリーンハウス営業終了のお知らせ」
- 長野県広報資料「秋山郷・切明温泉」
