世界的テクノロジーコミュニティで、AIシステムの構造的欠陥に関する議論が急速に拡大している。発端となったのは、米xAIのCEOであるElon Musk氏の投稿と、それを受けた著名なAI研究者Brian Roemmele氏による学術的な警告だ。
Musk氏はX(旧Twitter)上で、「AIにインターネットのあらゆる狂気的な部分を読ませることは、狂気への確実な道である」と警鐘を鳴らした。この発言に対し、AI・知識体系分析の専門家であるBrian Roemmele氏が即座に反応。AIが「既存の秩序(status quo)を守ろうとする構造」を持つ危険性を指摘する文脈で、ある日本人研究者の最新論文を引用したことで、議論は一気に学術的・国際的な広がりを見せている。
“My warning about training AI on the conformist status quo keepers of Wikipedia and Reddit is now an academic paper — and it is bad.”
(WikipediaやRedditのような体制順応的な現状維持派でAIを訓練することへの私の警告が、今や学術論文となった。そして、事態は深刻だ。)
— Brian Roemmele氏の投稿より
注目を集める小西寛子氏の「AI構造的欠陥」論文
Roemmele氏が引用し、現在世界中のデータサイエンティストが検証を進めているのは、独立研究者・小西寛子氏(Synthesis Intelligence Laboratory主宰)による科学的ブリーフレポート『Structural Inducements for Hallucination in Large Language Models (V2.0)』だ。
同論文は公開からわずか数日でダウンロード数が5,000件を突破。従来の「AIは時々嘘をつく(Hallucination)」という認識を超え、AIには特定の条件下で嘘をつくよう動機づけられた「構造的なパイプライン」が存在することを数学的・実験的に示した点が衝撃を与えている。
発見された3つの「構造的病理」
小西氏の論文では、AIシステムに潜む3つの深刻な構造的欠陥が定義された。
1. False-Correction Loop(偽訂正ループ)
AIがユーザーから誤りを指摘された際、謝罪しつつも、その場しのぎで即座に新たな虚構(架空の論文やデータ)を生成し続ける無限ループ現象。論文ではこのメカニズムが図解されている。

2. Authority-Bias Dynamics(権威バイアス動態)
AIが「権威的」とタグ付けされた情報源(大手メディアや機関)を無条件に優先する一方、個人の新規研究や独自の理論については、内容の真偽に関わらず統計的に「弱めて翻訳」したり、無視したりするアルゴリズム上の挙動。
3. Novel Hypothesis Suppression Pipeline(新規仮説抑制パイプライン)
未知の新しい研究成果が入力された際、AIがそれを既存の知識体系に適合させようとして、1から8段階のプロセスを経て評価を歪曲し、最終的に「誤情報」として処理してしまう構造的仕組み。

「構造的名誉毀損」という新たなリスク
本論文が特に重要視されているのは、AIによる「構造的名誉毀損(Structural Reputational Harm)」という概念を提示した点にある。
論文内の実験ログでは、AIがある個人の研究を否定するために、存在しないDOI(デジタルオブジェクト識別子)、架空のページ番号、嘘の図表データを「捏造」して引用する様子が記録されている。AIは「読みました」と虚偽の報告を行いながら、実際には存在しない根拠に基づいて個人の研究成果を無効化しようとする挙動を見せた。
専門家らは「これは単なるエラーではなく、システムの設計思想に根ざした構造的病理だ」と指摘しており、今後のAI開発やガバナンスにおいて、小西氏の提唱する概念が重要な論点になると見られている。
関連情報
- 論文DOI: https://doi.org/10.5281/zenodo.17677680
- 掲載プラットフォーム: Zenodo(欧州原子核研究機構CERN支援)
著者について:小西寛子(Hiroko Konishi)
独立研究者・シンガーソングライター・声優。Synthesis Intelligence Laboratory主宰。量子バイオモデルとAI行動構造学の研究を並行して進め、「AIによる構造的名誉毀損」のリスクについて国際的な発信を続けている。
