連載第4回 なんとカスハラ対応!?いじめで「組織防衛」に入った青梅市立N中学校

連載第4回 なんとカスハラ対応!?いじめで「組織防衛」に入った青梅市立N中学校

妙に緊張した保護者会で見えた、校長の危機管理と、A君本人聞き取りの行方

この記事は、青梅市「いじめは消えない」ではなく「大人が消している」――小規模特認校で起きた被害生徒への組織的排除(連載三回目)からの続きです。

小規模特認校である青梅市立第N中学校(今回より一部イニシャル表記)で続く、教師と生徒らによる組織的いじめ、そして隠蔽問題。去る13日、同校で保護者会が開かれた。取材班は会場に入れないため、出席した複数の保護者から事情を聞いた。そこで浮かび上がったのは、これまでとは明らかに違う学校側の空気だった。ひと言でいえば、学校は「組織防衛」に入っていた。

入口で始まった本人確認――学校は何を警戒したのか

複数の保護者によれば、今回の保護者会では、これまでになかった入室時の本人確認のような対応が行われていたという。これまでの保護者会では、ネームプレートの確認や厳格な本人確認はなかった。それが今回、急に変わった。

もちろん、学校側は「安全管理」「保護者確認」と説明するかもしれない。しかし、タイミングがあまりに露骨である。A君のクラスルームSOS削除、音楽教諭による謝罪強要、学年主任Iによる虚偽情報の拡散、教育委員会の回答書、市長への文書取材。こうした問題が外部に出始めた後の保護者会で、入口管理が厳しくなる。

校長は、取材班が調べてみると、過去に教員のカスタマーハラスメント対応の研究会に参加していた人物でもある。さすがに危機対応には抜かりがない、ということなのだろう。しかし、学校が本当にやましいことをしていないなら、保護者に対して堂々と説明すればよいだけだ。カスハラ対応のような構えを見せること自体が、保護者や外部の目を警戒し、内部の問題を守ろうとしているように見える。

隠しているから守る。守る必要があるから入口を固める。入口を固めるから、ますます疑われる。これが、組織防衛の典型である。

学年主任Iは、生徒をA君から引き離しているのか

保護者会に参加したA君の保護者が耳にしたのは、前回も取り上げた社会科担当の学年主任教諭の噂だった。複数の保護者・関係者によれば、I教諭は、A君を全校生徒から引き離すように、生徒一人一人に個別に声をかけているという。これが事実であれば、極めて重大である。それは「いじめを止める行為」ではなく、「告発した生徒を孤立させる行為」だからだ。

A君は、音楽教諭から恫喝的に責められ、謝る必要のないことで無理矢理謝罪させられた。さらに、学年主任によって、言ってもいない「ウザい」「死ね」という暴言を言ったかのように扱われ、「盗聴器を見せびらかした」という虚偽の説明(名誉毀損)まで複数の教職員や生徒に伝えられた。後に副校長による聞き取りで、それらは事実無根であることが明らかになっている。

それにもかかわらず、A君への謝罪はない。訂正もない。名誉回復もない。そのうえで、学年主任が生徒らに個別に声をかけ、A君から距離を取らせるような動きをしているのだとすれば、それは教育ではない。学校による排除である。

内申書という、口に出さない圧力

学年主任は、進路指導にも関わる教員だという。ここが、学校内のいじめ隠蔽を考えるうえで極めて重要である。中学生にとって、内申書は重い。保護者にとっても、内申書は恐ろしい。先生に逆らえば、進路に響くのではないか。学校に不利なことを言えば、自分の子が不利益を受けるのではないか。そう考えれば、生徒も保護者も口を閉ざす。

いじめを見た。不自然な対応を見た。A君が孤立させられていると感じた。それでも、言えない。言えば自分の子に返ってくるかもしれないからだ。

これが、学校いじめが解決しない最大の理由の一つである。学校の中では、教師が評価者であり、進路に関わる存在であり、日々の教室の空気を支配する存在である。その教師が、被害を訴えた生徒に不利な空気をつくれば、周囲の生徒も保護者も沈黙する。

保護者会で、音楽教諭や学年主任Iに近い生徒らの保護者が終始無言だったという話もある。その沈黙は、単なる沈黙ではない。学校の空気を読んだ沈黙であり、被害生徒をさらに孤立させる沈黙である。

「SNSを上手く使う1年生」は良い子で、SOSを書いたA君は悪者なのか?都合のよい校長の発言。

保護者会では、校長から、今回の1年生はSNSを上手く使って書き込んでいて良い子だ、という趣旨の話があったという。これを聞いた保護者らは、暗にA君を批判しているように受け取った。

なぜなら、A君は学校内のGoogle ClassroomにSOSを書き、その投稿を校長に削除された生徒だからである。

A君はSNSで誰かを攻撃したのではない。学校生活上の被害を訴えた。音楽教諭による謝罪強要、学年主任による虚偽情報の拡散、学校内での孤立化について記録した。自分を守るために、声を上げた。そのA君の書き込みは消された。

一方で、校長は「SNSを上手く使っている1年生」を評価する。では、何が良くて、何が悪いのか。学校に都合のよい書き込みは良い。学校に不都合なSOSは悪い。そんな基準ではないのか。

そもそも、主要SNSには年齢制限がある。中学1年生にSNS利用を前提としたような評価を校長がすること自体、教育現場として違和感がある。学校の掲示板にSOSを書いたA君は削除される。一方で、SNSを上手く使う1年生は褒められる。このねじれこそ、青梅市立第N中学校の本質を示している。

意見を言わせない保護者会

さらに異常なのは、今回の保護者会では、保護者に意見を言わせなかったという点である。普段の保護者会では、それぞれに意見を言う機会があったという。しかし今回は違った。保護者からの意見を受ける場ではなく、学校側が必要なことだけを伝え、場を閉じるような進行だったと複数の保護者は語る。

これは、説明会ではない。管理された場である。学校側が本当に保護者と向き合う気があるなら、A君の件について、少なくとも次の点を説明すべきだった。なぜA君のSOS投稿を削除したのか。なぜ副校長の聞き取りで事実無根とされた虚偽情報について、学年主任Iから謝罪がないのか。なぜA君を避ける生徒側の別室対応ばかりが配慮されるのか。なぜ被害を訴えたA君の名誉回復と安全確保が後回しにされるのか。

しかし、保護者に意見を言わせないなら、こうした問いは表に出ない。これが、小規模特認校・青梅市立第N中学校という学校で起きている。

7月16日、A君本人への聞き取りへ

一方で、事態は一歩進む。A君は、7月16日16時、青梅市教育委員会、つまり青梅市役所内で、本人聞き取りを受ける予定である。

ここまで来たこと自体には、大きな意味がある。これまで教育委員会の回答書では、A君本人を直接どのように聞き取ったのかが極めて不明確だった。本来、被害を受けた子どもの話を聞かずに、教員側や学校側の説明を中心にして「威圧ではない」「謝罪強要ではない」と結論づけること自体が、手続として致命的である。その不備が、ようやく本人聞き取りへ進んだ。

しかし、喜んでばかりはいられない。学校も教育委員会も、これまで一貫して保身を選んできた。音楽教諭の謝罪強要を認めなかった。学年主任Iによる虚偽情報(名誉毀損)拡散を放置した。校長によるSOS削除を正面から説明していない。A君が孤立していく構造を止めていない。

本人聞き取りが行われても、それがまた学校側の結論を補強するための形式的手続にされてしまえば、意味はない。聞くべきことは明確である。A君は何をされたのか。誰に責められたのか。なぜ泣いたのか。なぜ謝ったのか。なぜ音楽に出られなくなったのか。なぜ録音機器を持たざるを得なかったのか。なぜClassroomにSOSを書いたのか。そのSOSを削除されたとき、何を感じたのか。

この聞き取りは、教育委員会のための聞き取りではない。A君の尊厳を回復するための聞き取りでなければならない。

市長回答は「継続中」

青梅市長・大勢待利明氏に対する編集部の文書取材について、市側からは「継続中」との返答が来ている。継続中。この言葉もまた、行政らしい。

しかし、A君の学校生活は継続中である。A君の不安も継続中である。A君の名誉が傷つけられた状態も継続中である。A君のSOSが削除された問題も継続中である。

行政の回答が「継続中」である間にも、子どもは学校に戻るか戻らないかを考え、試験を受け、周囲の視線にさらされる。市長が本当にすべきことは、教育委員会の説明を待つことではない。被害を受けた子どもの言葉を聞き、行政として何が間違っていたのかを直視することである。

取材は続く

A君の保護者らは、各紙の取材に対して個別に対応しているという。本件は、もはや一つの中学校内の問題ではない。これらは教育行政が、子どものSOSをどう扱うのかという問題である。学校は「配慮」と言う。保護者会では意見を封じる。被害生徒は孤立する。加害側は守られる。行政は「継続中」と言う。

取材班も、引き続き取材を進める。小規模特認校青梅市立N中学校で、何が起きているのか。誰がA君を孤立させたのか。誰がSOSを消したのか。この問いを、終わらせてはならない。

*A君保護者への連絡先は、安全のため当編集部が中継しています。お問い合わせは、joho(@)hirokokonishi.com までお願いします、