検索大手Googleでおなじみの米Alphabet傘下の自動運転開発会社Waymoと、タクシーアプリ「GO」を運営するGO、日本交通の3社が、東京で2027年中に完全無人の自動運転タクシーを商用化することを目指すと発表。
計画しているのは、自動運転レベル4(*あらかじめ定められた道路や地域、天候、時間帯などの条件の範囲内であれば、システムが運転のすべてを担当。その条件下では、原則として人間のドライバーが常に運転を監視したり、緊急時に運転を引き継いだりする必要はない)による、運転席にドライバーを置かないタクシーサービスだ。最初は限定的な台数から始め、段階的に100台規模へ拡大する方針。利用者は「GO」と「Waymo」の両方のアプリから配車を依頼できる予定。
但し、現在の所では、「2027年になれば必ず東京中で無人タクシーが走る」と決まったわけではない。今回の発表で重要なのは、商用化を目指すことが正式に決まった一方、実際の開始には安全性の検証と行政の許認可が残っているというハードルがある。
すでに東京の道路を走っているWaymo
Waymoの東京進出そのものは今回が最初ではない。Waymo、GO、日本交通は2024年12月に提携を発表し、2025年から東京で走行データの収集や自動運転システムの検証を進めて来た。
現在は、日本交通の訓練を受けた乗務員が運転席に同乗した状態でWaymo車両を走らせている。走行地域として示されているのは、港区、新宿区、渋谷区、千代田区、中央区、品川区、江東区の7区。 東京は、米国の都市とは道路環境が大きく異なり、左側通行だけでなく、狭い生活道路、自転車や歩行者の多さ、複雑な交差点などへの対応が必要になる。
Waymoにとって東京での走行は、同社が自動運転技術を米国外の公道へ展開する最初の大きな試みでもある。2024年の発表段階から、東京で実際に車両を走らせながら、こうした地域固有の道路環境へシステムを適応させる方針を示していた。
目標としての2027年は、「運転席に人がいるかどうか」
3社が目指す2027年のサービスでは運転席にドライバーを置かない完全無人走行を目標としている。同社らはこれを自動運転レベル4として展開し、一般利用者が料金を支払って利用できるタクシーサービスにする計画。
Waymoは米国ではすでに複数都市で完全自動運転による有料配車サービスを運営しているが、東京で計画通り商用化されれば、日本の大都市交通に本格的なロボタクシーが組み込まれる大きな転換点になるといえる。
そして、計画では、まず小規模な車両数で開始し、その後、安全性や運用状況を確認しながら段階的に100台程度へ拡大する方針だという。また、Waymoは「東京の主要地域」への展開を示しているが、商用サービス開始時の具体的な対象区や営業区域は現時点では公表していないので、現在試験を行っている前出の7区が、そのまますべて2027年の営業区域になると決まったわけではない。実際、乗客には長距離を利用する場合もあるし、その場合の対応など、まだまだ公表されていない部分も多い。
「GO」で普通のタクシーと無人タクシーを呼ぶ
利用者にとって大きいのは、既存の「GO」アプリにも組み込む計画があるということだ。GOは、将来的にアプリ一つから、人間が運転する従来型タクシーとWaymoの完全自動運転タクシーの双方を呼べるようにするとしている。 また、Waymo自身のアプリからも利用できる予定。この仕組みが実現すれば、利用者にとって自動運転車はスマートフォンで普通に呼ぶ交通手段へ変わるので、技術そのものよりも、むしろこの変化の方が社会への影響は大きいかもしれない。
日本交通との連携
今回の計画は、米国企業Waymoが単独で日本へ乗り込む形ではなく、Waymoが自動運転技術や車両管理システムを提供し、GOが利用者向けの配車プラットフォームやタクシー事業者との連携を担当。そして日本交通が、営業所運営や車両の運行管理など、日本のタクシー事業に必要な現場部分を担う。
当然、自動運転車を「走らせられる」ことと、タクシー事業として、毎日安全に「営業できる」ことは同じではない。法・行政的な制約もあるので、車両整備、清掃、利用者対応、トラブルへの対応、営業所管理など、ドライバーがいなくなっても必要な業務は残る。
その意味でも今回の計画は、単純に「AIがタクシードライバーを置き換える」という構図より、自動運転技術と既存のタクシー運営網を組み合わせる試みとして見る方が実態であると言える。
背景にあるタクシー乗務員不足
3社は今回の取り組みについて、日本の人口減少や将来的な労働力不足への対応も理由として挙げている。日本交通も、自動運転タクシーを有人タクシーと共存させながら、将来的な乗務員不足を補う手段として位置付けている。
そのため、現段階では「自動運転が既存のタクシーをすべて置き換える」という計画ではない。むしろ、人が運転するタクシー+自動運転タクシーという混在型の交通システムが想定されている。
深夜や早朝などドライバーを確保しにくい時間帯や、将来的にタクシー供給が不足する地域で、自動運転車をどう組み合わせるかが今後の焦点になりそうだ。
最大のハードルは「技術」だけではない
2027年という目標を左右する最大の要素の一つが、日本の許認可だ。日本では2023年4月から、道路交通法上、レベル4に相当する「特定自動運行」を許可する制度が施行されている。すでに福井県永平寺町などで、運転者を配置しないレベル4自動運転サービスの実例がある。
一方で、公道でレベル4サービスを行うには、車両そのものの安全基準だけではなく、自動運転を行う条件や運行計画についても審査を受ける必要がある。タクシーとして営業する場合には、道路運送法上の手続きも関係する。
GO、Waymo、日本交通も、今回の発表で、正式なサービス開始時期は、必要な安全性が確認され、関係する許認可を取得した後に決定すると明記している。
東京のタクシーは本当に変わるのか
さて、今回のニュースの重要性は、「自動運転車が東京を走った」ということではない。その段階はすでに始まっている。次に問われるのは、実験車両だったWaymoが、一般客を乗せる→料金を取る→運転席に人がいない→日常的な交通サービスとして運行するところまで進めるかだ。そして、ここを越えれば、自動運転は「未来の技術」の話ではなくなる。
スマートフォンでタクシーを呼び、到着した車を見ると運転席には誰もいない――。3社が示した2027年という目標は、そんな光景が東京の日常になるかどうかを判断する、具体的な期限が初めて見えてきたニュースといえそうだ。そして、実際の開始日、営業地域、料金、利用可能時間、具体的な車両数などは、これから明らかになるだろう。
2027年までの注目点は、「Waymoが東京を走れるか」から、「東京で普通のタクシーとして営業できるか」へ移ったといえるだろう。
資料(出典)
Waymo「Opening our doors to Tokyo riders in 2027 with Nihon Kotsu and GO」(2026年9月14日)。2027年の完全自動運転サービス、100台規模への段階的拡大、規制承認・検証を開始条件とすることを記載。 Waymo公式発表
GO株式会社「GO、Waymo、日本交通 自動運転タクシー商用化の実現に向けて合意」(2026年9月15日)。2027年中のレベル4完全無人タクシー、段階的に100台規模、3社の役割、許認可条件を記載。
Waymo「東京への進出」。現在の東京での試験走行地域および日本交通乗務員同乗での検証状況。 Waymo日本公式ページ
警察庁「自動運転」。レベル4に相当する「特定自動運行」の許可制度と、2023年4月施行の道路交通法について。
国土交通省「国内初!運転者を配置しないレベル4での自動運転移動サービスの開始について」。日本国内でのレベル4運行に必要となる認可・許可の実例。
Reuters「Waymo, Japanese partners target driverless taxi service in Tokyo in 2027」(2026年9月15日)。商用化計画、段階的な100台規模への拡大などを報道。

