AfDがドイツで躍進した理由――「思想」より先に、有権者は政治の異常を見た

AfDがドイツで躍進した理由――「思想」より先に、有権者は政治の異常を見た

ドイツでAfD(Alternative für Deutschland)が躍進している。2025年の連邦議会選挙でAfDは第2票20.8%を獲得し、2021年から10.4ポイント伸ばした。さらに2026年9月のザクセン=アンハルト州議会選挙では43.8%を得て第1党となり、全国世論調査でも28%前後の支持を示している。これは一時的な抗議票というより、既成政治への深い不信が表面化した結果と見るべきだろう。

しかしながら、重要なのは、直ちに「AfD支持者はみな極端な思想に染まった」と錯覚しないことだ。もちろん、ザクセン=アンハルト州のAfD組織は同州の憲法擁護当局から「確定的な右翼過激主義的活動」と位置づけられており、その重要性を無視することはできない。 しかし選挙結果を読むうえでは、支持者の心理を「思想」だけで説明するより、「政治が生活上の不安に答えていない」という判断が広がったと見る方が現実に近い。

実際、ドイツ公共放送連盟(ARD)のドイツトレンド エクストラ(DeutschlandTrend extra)は、AfD上昇の理由について、AfD自体の政策・人物評価よりも、他党の政治提案への失望、経済不安、安全への不安が大きいと整理している。調査では、政府が重要分野で成果を出せばAfD支持は下がると見る有権者も69%に上った。 つまり有権者の多くは、最初からイデオロギーに投票したというより、「今の政治では自分たちの不安が処理されない」と判断した可能性が高い。

2025年選挙の分析でも、経済と移民は大きな争点だった。KAS(コンラート・アデナウアー・シュティフトゥングKonrad-Adenauer-Stiftung:ドイツの政党「キリスト教民主同盟(CDU)」に深く関わる政治財団)の分析は、選挙戦で投票判断に影響した要因として、政党の立場、政治家への信頼・不信、連立の可能性、そして経済と移民を挙げている。 bpb(連邦政治教育センター  Bundeszentrale für politische Bildung) も、AfDの支持拡大について、単一要因では説明できないとしつつ、経済的に「よくない/悪い」と感じる層で支持が大きく伸びたことを示している。

この構造は、「極右が勝った」というラベルだけでは説明できない。AI研究者として研究している構造からすると、人間社会でも、問題そのものより先に「説明している側への信頼」が壊れると、既存の正統性が急速に失われる。政治が移民、治安、物価、エネルギー、戦争、地方格差といった不安を十分に扱えないとき、有権者は必ずしも精密な思想体系ではなく、「このままではおかしい」という生活感覚で投票先を変える。

したがって、AfD躍進の理由を客観的に書くなら、結論は次のようになるだろう。——AfDが伸びたのは、ドイツ国民が突然、極端な思想を全面的に支持し始めたからではない。むしろ、少なくない有権者が、経済不安、移民政策、治安、東西格差、そして既成政党への不信を通じて、「現在の政治は普通の感覚から見て機能していない」と判断したからである。

問題は、その不満の受け皿が、民主主義にとって問題とされる要素を含む政党政策に集中していることだ。だからこそ、必要なのは有権者を上から非難することではなく、なぜ多くの人が既成政治を信じなくなったのかを正面から検証することである。

資料・出典

  • ドイツ連邦選挙管理官:2025年連邦議会選挙結果。
  • ザクセン=アンハルト州選挙結果:2026年州議会選挙。
  • wahlrecht.de:2026年9月時点のINSA世論調査。
  • infratest dimap / ARD DeutschlandTrend extra:AfD上昇理由に関する有権者調査。
  • bpb:AfDの選挙結果・支持層分析。
  • 小西寛子「Structural Inducements for Hallucination in Large Language Models (V4.1)」およびFCL-S資料。構造分析・権威バイアス監査の補助資料として参照。