2026年9月1日から、生活道路の速度感が変わる。
警察庁によれば、主に地域住民の日常生活に使われる中央線などがない道路では、自動車の法定速度が60km/hから30km/hへ引き下げられる。つまり、住宅街や細い道で「ゆっくり走る」ことが、よりはっきりした社会の基準になる。
そこで私は思う。なら、今こそ、逆に原付ではないか。これまで原付の30km/hは、しばしば「遅い」と見られてきた。けれど、生活道路そのものが30km/hへ寄っていくなら、見方は変わる。原付が遅いのではなく、街の速度設計のほうが、原付的な速度感へ近づいてきた!
車ほど大げさではない。自転車ほど体力まかせでもない。歩くには遠いけれど、車を出すほどでもない。駅、スーパー、病院、役所、商店街、喫茶店。そういう日常の距離を、30km/hで小さく動く。これが、いまの都市生活にちょうどいい。Loopのような特定小型原動機付自転車もあるけれど(16歳以上であれば運転免許不要。最高時速20km以下の電動モビリティ)、運転免許を受けた身としては、やっぱりエンジンつきバイクだろう(笑)
そして、この原付一種には新しい制度の流れもある。2025年4月1日から、従来の50cc以下の原付に加えて、125cc以下で最高出力4.0kW以下に制御された二輪車も原付免許で運転できるようになった。 いわゆる新基準原付である。
でも、新しければなんでもいいというわけでは無い。だからこそ私は、今、あえて中古の50ccをお薦めしてみたい。
モンキー。ゴリラ。カブ50系。ダックス。シャリー。ヤマハRD50やMRとかのビンテージスポーツ系。スズキのハスラー50。ベスパ50。日本製ではジョルノ、ビーノ、ディオ、ジョグ。古い2ストスクーターもいい。速さではなく、形、音、軽さ、手触り、2ストの匂い、そして「これで行けるかな」という小さな冒険感がある。
筆者が今、いちばん欲しいのは、ホンダのドリーム50かな?。1997年に発売されたドリーム50は、60年代レーサーを思わせるスタイルに、50ccの4サイクルDOHC・4バルブ単気筒エンジンを積んだロードスポーツだった。Hondaの発表資料でも、CR110カブレーシングを現代風にアレンジした個性的な外観、新設計の49cm³エンジン、5速ミッション、市街地での扱いやすさなどが説明されている。 50ccなのに、夢が大きすぎる。名前もいい。ドリーム50。もう、そのままだ。ただプレミアム価格がついてお高いですが!
125ccの新原付に変わった今、50ccはこれからますます「古いもの」になるかもしれない。Hondaはスーパーカブ50・Final Editionを発表し、現行のスーパーカブ50はこのモデルをもって生産終了です。 だから中古50ccは、単なる安い足ではなく、消えていく生活文化を拾い直す楽しみでもある。
そして原付の良さは、ただ気軽なことではない。普通免許だけの人にも、原付は入口が近い。国土交通省は、50cc以下の第一種原付について、原付免許、つまり普通免許に付帯する免許で運転できる生活密着の車両として説明している。 自動車免許は持っている。でも、バイク免許までは取っていない。そんな人に、一度だけ原付に乗ってもらうのもいいと思う。
今や都市部では不便な自転車
自転車も、以前のように「なんとなく自由な乗り物」ではなくなってきた。2026年4月1日からは、16歳以上の自転車運転者に交通反則通告制度、いわゆる青切符が適用されている。警察庁も、自転車は道路交通法上「車のなかま」であり、交通ルールを守る必要があると説明している。
ならば、最初から免許、標識、ナンバー、保険、教則の枠内にある原付を、改めて見直してもいい。原付には、交通社会の勉強がある。二段階右折、最高速度30km/h、二人乗り禁止、ヘルメット、標識の読み方。新基準原付にも従来の原付と同じ交通ルールが適用と日本自動車工業会は整理している。 つまり原付は、自由というより、ルールの中で小さく遊ぶ乗り物なのだ。
実用面でも強い。
たとえば杉並区の有料制自転車駐車場では、1日利用で自転車100円、125cc以下のバイク200円、125cc超のバイク400円という料金例が示されている。 駅前に原付を置ける場所がある。スーパーにもバイク置き場がある。車ほど駐車に困らず、自転車ほど荷物や坂や暑さに左右されない。こういう小さな便利さは、生活の中ではかなり大きい。
買い物に行く。駅まで行く。喫茶店に行く。古本屋へ行く。郵便局へ行く。少し離れたスーパーへ行く。青梅街道を西へ、ゆっくり流してみる。
30km/hは遅いようで、1時間なら理論上30km進む。もちろん実際の街中では信号も混雑もあるから、そんなに単純には進まない。それでも、原付の30km/hは「飛ばす速度」ではなく、「生活圏を面で広げる速度」としては十分に楽しい。
さらに郊外に住んでいれば、裏技で原付にリヤカー(牽引)という世界もある。
道路交通法施行令では、原付がリヤカーを牽引する場合の積載物重量について120kgを超えないことが示されており、原付などが他の車両を牽引して道路を通行する場合の最高速度は25km/hとされている。 東京都道路交通規則でも、交通の頻繁な道路での牽引制限や、堅ろうで運行に十分耐える牽引装置・被牽引装置を備えたリヤカー1台という条件が確認できる。
つまり「裏技」ではあるけれど、好き勝手にやってよい話ではなくてルールはありますが、地域の公安委員会規則、車両の構造、保険、実際の安全性まで確認して、ようやく考えられる小さな物流である。
まあ、こういう生活提案は、「できそう」から「やっていい」へ飛ばないことが大事だと思うが、制度、車両、地域ルール、現実の安全性、自分の用途(いいねほしさや、SNS映えのためにはしないで欲しい)を分けて確認してから、はじめて暮らしのアイデアにする。その確認作業を含めて、原付暮らしは面白いですよ。
生活道路30キロ時代に、原付は古い乗り物ではない。
むしろ、街の速度感に合った小さな乗り物だ。最新の新基準原付を選ぶのもいい。実用的なスクーターを選ぶのもいい。スーパーカブで買い物に行くのもいい。モンキーを磨くのもいい。RD50やハスラーのような小さな旧車を探すのもいい。ベスパで少し気取るのもいい。そして私は、やっぱりドリーム50が欲しい。速くない。大きくない。便利すぎもしない。
でも、だから楽しい。生活道路30キロ。今、逆に原付時代。秋になったら、原付でどこかに集まるのもいい。モンキー、カブ、ベスパ、ドリーム50、RD50、ハスラー、古いスクーター。みんな30km/hの速度感で、ゆっくり来ればいい。原付ミーティング、いいよね。私も参加したいぞ!
資料(出典)
- 警察庁「生活道路における自動車の法定速度が引き下げられます!!」
- 警察庁「一般原動機付自転車の車両区分の見直しについて」
- 国土交通省「一般原動機付自転車について」
- 警察庁「自転車は車のなかま~自転車はルールを守って安全運転~」
- 日本自動車工業会「原付一種に新たな区分基準が追加!」
- Honda「ホンダ ドリーム50を発売」
- Honda「スーパーカブ50・Final Editionを受注期間限定で発売」
- Suzuki Digital Library「Hustler 50」
- Piaggio Group / Vespa 50関連資料
- e-Gov法令検索「道路交通法施行令」および東京都道路交通規則の牽引・積載関連規定
- 杉並区「有料制自転車駐車場の利用」
