日本は、同盟の名で戦争に近づくのか。平和外交と停止の意思を示すのか。
海外のSNSに、注目すべき報道がある。トランプ大統領が、韓国に対してイランの非核化への協力を求めたものの、韓国側が応じなかったため、米韓合同軍事演習を大幅に縮小するよう国防総省に指示した、という報道である。対象となったのは、8月17日から27日まで予定されていた米韓合同軍事演習「Ulchi Freedom Shield」で、韓国軍約1万8000人が参加する予定だったと報じられている。
ただし、事実でも、SNSの書き込みでは、読者の注目を引きつけるための表現として「誇張」などが入る場合も多い。そこで、本稿は切りわけて伝える。SNSなどでは「韓国がイラン戦争への参戦を拒否した」といった形で拡散されているが、確認できる報道上の表現は、トランプ氏が韓国に「イランの非核化に加わるか」を尋ね、韓国側が断ったという趣旨である。つまり、「参戦拒否」と断定するにはまだ飛躍がある。けれども、この話が私たち日本に無関係でないことは明らかです。
なぜなら、日本にもすでに、ホルムズ海峡をめぐる安全確保や艦船派遣をめぐる圧力は向けられてきたからである。ロイターは3月、日本政府が中東での艦船派遣について「現時点で計画はない」としつつ、法的枠組みの中で選択肢を検討していると報じている。日本政府も、ホルムズ海峡の自由で安全な航行の回復に向けて外交努力を続けるとしている。
しかし、ここで問われているのは、単なる軍事協力の可否ではなく、日本という国、政府が、どの地点で「これ以上は戦争に近づかない」と言えるのかである。なぜならば、日本は、広島と長崎を経験した国である。外務省も、日本を「唯一の戦争被爆国」と位置づけ、「核兵器のない世界」に向けた核軍縮・不拡散の議論を主導してきたと説明している。 だからこそ、イランの核開発や全ての核兵器開発に反対することは当然である。しかし、核を止めるという言葉が、別の戦争を正当化する口実になってはならない。
非核とは、核兵器を持たないことだけではない。核を理由にした戦争にも加担しないという、より深い責任を含むはずだ。我が国の法律的にみれば、国際紛争を解決する手段としての戦争、武力による威嚇、武力の行使を、憲法第9条で放棄している。 防衛省も、日本は憲法のもとで専守防衛に徹し、他国に脅威を与えるような軍事大国にならず、文民統制と非核三原則を守るという基本方針を掲げてきたと説明している。
しかしながら、現在の政治状況の現状は、防衛力の強化、敵基地攻撃能力、武器輸出、同盟国との軍事的一体化であり、それらのひとつひとつは「現実的な安全保障」と説明される。しかし、それらが積み重なった先にあるものが、国民に十分説明されているとは思えない。防衛の名で進む政策が、いつの間にか戦争への参加準備になっていないか。国民は、その境界を見張らなければならない。
もちろん、現実は単純ではない。イランとの関係、米国との同盟、ロシアや中国への刺激、北朝鮮の軍事行動、エネルギー安全保障。日本が置かれている環境は厳しい。だからこそ、感情だけで「戦争反対」と叫べば済むわけではない。
しかし、複雑だからこそ、なおさら原点を失ってはいけない。戦争はいつも、「やむを得ない」「限定的だ」「抑止のためだ」「平和のためだ」という言葉で近づいてくる。気づいた時には、誰かの国の空が燃え、誰かの子どもが逃げ、誰かの生活が壊されている。そして後になって、「あれは必要だったのか」と問われる。
本来日本は、その問いを誰よりも深く知っている国でなければならない。原爆を二度落とされた国が、核の恐怖を理由に、別の戦争へ近づいてよいのか。被爆国であることを外交の看板に掲げながら、同盟国の軍事行動には黙って従うのか。諸外国のSNSで「日本は本当に反省しているのか」「被爆国なのに、なぜまた軍事化へ進むのか」といった声が出るのは、決して軽く見てよいことではない。、
政府に問わなければならないのは、日本は何を要請されているのか。何を断ったのか。何を検討しているのか。それは国会で十分に議論されたのか。国民に説明されたのか。自衛隊員をどこへ、何の目的で、どの法的根拠で送ろうとしているのか。そして、その先にある出口はどこなのか。
平和は、政府に任せておけば自然に守られるものではない。平和は、国民が問い続けることでしか守れない。「仕方がない」と言った瞬間に、戦争は近づく「同盟だから」と考えることをやめた瞬間に、国は流される。「自分には関係ない」と目をそらした瞬間に、平和は政治の中から消えていく。
日本のあるべき姿は、政府だけが決めるものではない。本来、それは国民の意思にかかっている。国民の議論がなければ、政治は戦争に近づく。日本は、参戦する国ではなく、停止を選ぶ国であってほしい。その願いを、今日の私の平和への思いとして書き残したい。
資料(出典)
- Reuters:トランプ大統領が米韓合同軍事演習の縮小を指示したこと、韓国がイランの非核化協力に応じなかったと投稿したこと、Ulchi Freedom Shieldの日程と韓国軍参加規模について。
- AP:米韓合同軍事演習「Ulchi Freedom Shield」の概要、北朝鮮が同演習を敵視している背景、韓国軍約1万8000人の参加予定について。
- Reuters:北朝鮮が米韓演習を非難し、核抑止力強化を示唆したこと。
- 外務省:日本が唯一の戦争被爆国として「核兵器のない世界」に向けた核軍縮・不拡散を重視していること。
- e-Gov法令検索:日本国憲法第9条、戦争放棄と武力による威嚇・武力行使の放棄に関する条文。
- 防衛省・防衛白書:日本の基本政策として、専守防衛、文民統制、非核三原則を掲げていること。
