夏休みの宿題とYouTube脱線――子どもに必要なのは「禁止」ではなく、目的を持って使う力。アプリ開発秘話

夏休みの宿題とYouTube脱線――子どもに必要なのは「禁止」ではなく、目的を持って使う力。アプリ開発秘話

夏休みも後半に入ると、家庭では宿題、自由研究、読書感想文、調べ学習の追い込みが始まります。昔なら、調べ学習の中心は図鑑、辞書、百科事典、図書館でした。いまはそこに、YouTubeやWeb検索が加わっています。理科の実験動画を見る。社会科の資料を探す。英語の発音を確認する。工作や観察の手順を動画で見る。子どもにとって、インターネットはもう単なる遊び道具ではなく、学習の入口にもなっています。

こども家庭庁の令和7年度「青少年のインターネット利用環境実態調査」速報では、10〜17歳の青少年のインターネット利用率は99.0%、小学生10歳以上でも98.5%とされています。つまり、子どもとネットの関係は、すでに「使わせるか、使わせないか」だけで語れる段階を過ぎています。問題は、どう使わせるかです。

同じ調査では、青少年のインターネット利用内容として、動画視聴が92.1%とされています。小学生、中学生、高校生を問わず、動画は子どものネット利用の中心にあります。これは悪いことばかりではありません。文章だけでは分かりにくいことも、動画なら一目で分かることがあります。実験の変化、発音、手順、動き、音、空気感。動画には、文字だけでは届きにくい学びがあります。だから、YouTubeを全部禁止すればよい、という話ではありません。

ただし、YouTubeは学習用の動画だけでできているわけではありません。トップページ、Shorts、コメント欄、関連動画、おすすめ動画。学習のために一本だけ動画を開いたつもりでも、その周囲には、次の動画、さらに次の動画へ誘導する導線があります。大人でも脱線します。子どもなら、なおさらです。

保護者が何もしていないわけではありません。こども家庭庁の調査では、子どもがスマートフォンを利用する青少年の保護者の85.8%が、何らかの方法で子どものインターネット利用を管理していると回答しています。フィルタリング、利用時間や場所のルール、対象年齢に合ったサービスやアプリの利用など、家庭ごとに工夫がされています。

それでも、現場ではこういう声が出ます。「宿題でYouTubeを使わせたいけれど、関係ない動画まで見てしまう」「ペアレントコントロールを設定していても、動画一本単位で管理するのは難しい」「完全に禁止すると調べ学習に困る。でも自由にすると脱線する」。ここに、いまの家庭学習の難しさがあります。大きな制限はできる。でも、「この理科の実験動画だけは見せたい」「この自由研究の参考動画だけは許可したい」「でもYouTube全体は自由に開かせたくない」という細かい運用は、意外と難しい。家庭が求めているのは、単なる禁止ではありません。学習に必要なものだけを通し、必要でない導線を減らすことです。

AI研究者・声優・シンガーソングライターとして、自由な表現や幅広い学びを実践する筆者は、子どもが好きなことを持つこと自体は大切だと思っています。絵を描きたい、音楽をやりたい、動画を作りたい、ゲームを作りたい、発信したい。それ自体は悪いことではありません。第一生命の「大人になったらなりたいもの」調査でも、「YouTuber/動画投稿者」は子どもの将来像の中に登場しています。いまの子どもたちにとって、動画投稿者や配信者は、遠い世界の存在ではなく、日常的に目にする職業の一つになっています。

ただ、ここで大人が考えなければならないことがあります。子どもが「YouTuberになりたい」と言うとき、その背景にあるのは本当に創作意欲でしょうか。それとも、目立つこと、再生されること、楽に成功しているように見えることへの憧れでしょうか。もちろん、動画制作そのものには、企画、構成、撮影、編集、音声、著作権、表現、継続力など、多くの学びがあります。本気で取り組めば、非常に総合的な創作活動です。しかし、子どもが画面の中で見ているのは、努力の過程ではなく、結果だけであることが多い。再生数、いいね、派手な反応、短い刺激、次々に流れてくるおすすめ。その環境に長く置かれると、地味に調べる、考える、書く、直す、我慢する、積み上げるという経験が薄くなってしまうのではないか。私はそこに危機感があります。

夏休みの宿題は、ただ提出物を終わらせるためだけのものではありません。自分でテーマを決める。調べる。分からないところで立ち止まる。資料を比べる。自分の言葉でまとめる。最後まで仕上げる。こうした経験は、子どもが成熟していくために必要です。ところが、画面の導線は、その成熟の時間を簡単に奪います。少し調べるつもりが、関連動画に流れる。実験動画を見たはずが、Shortsを見続ける。コメント欄を読み始めて、気づけば宿題と関係のない世界に入っている。

これは、子どもの意思が弱いからだけではありません。大人でも負けるように設計された導線の中に、子どもが置かれているからです。だから私は、家庭の責任だけにしてはいけないと思っています。「子どもに任せればいい」「好きなことをやらせればいい」「そのうち自分で分かる」。それだけでは、成熟に必要な時間が画面に吸い込まれてしまうことがあります。子どもには自由が必要です。でも、自由だけでは足りません。目的を持って使うための枠組みも必要です。

ここで大事なのは、子どもを監視することではありません。YouTubeやウェブサイトで「何を見ているか」をずっと見張ることではなく、「なぜそれを見るのか」を確認することです。理科の自由研究で必要なのか。社会の宿題で必要なのか。英語の発音を確認したいのか。工作の手順を見たいのか。それとも、ただ何となく次の動画を見たいだけなのか。この違いを、子ども自身が言葉にできるようにすることが大切です。

学習に必要な動画やサイトだけを見せるために専門家として頭をひねる

筆者の私は、AI研究者でもあり小さい私塾も運営しています。その視点から、子どもにYouTubeなどを完全に「禁止」してシャットアウトするのではなく、「動画やサイトを見たいなら、親に理由を伝えて許可をもらおう」という言語化のステップを挟む。この考え方が、この時代にふさわしいパソコン用学習コントロール・アプリ開発のアイディアにつながりました。私が一番大切にしたい「論述」「真実・事実を正しく伝える力。」「言語化」です。

パソコンには、最初から付いている「既存のペアレンタルコントロール」のように一律でYouTubeを禁止してしまいます。これだと、本当に学習に必要な解説動画まで見られなくなり、子どもの探究心を摘み取ってしまうことがあります。だからこそ必要なのは、頭ごなしの「ダメ!」ではなく、「なぜ見たいの?」と聞ける仕組みです。

この「禁止から対話へ」の仕組みには、大きな意味があります。まず、子どもが「なぜこれを見たいのか」を自分で言語化するため、目的意識を持ってネットを使う練習になります。次に、「今この実験の動画が見たいんだ」「それなら15分だけね」といった、親子の前向きなコミュニケーションが生まれます。そして、YouTubeを単なる娯楽のダラダラ視聴ではなく、必要なときに必要な内容を見る学びのツールへ変えやすくなります。子どもの「見たい!」という意欲を尊重しながら、正しいネットリテラシーを親子で育てていく。このためのアプリの開発に名付けたのは、親子の対話、「見てもOK?」という会話から「MitemOKey」と名付けました。このアプリは、そのための道具として作りました。

話を戻しますが、きっかけは、私塾の保護者の皆さまから寄せられた声にもあります。「教育上好ましくないYouTube動画やサイトを、子どもが見てしまって困る」「宿題でYouTubeを使わせたいけれど、関係ない動画まで見てしまう」「ペアレントコントロールだけでは、動画単位の細かい管理が難しい」。そこで考えたMitemOKeyは、YouTubeやWebを全面的に禁止するためのものではありません。学習に必要なページや動画だけを、家庭のルールに合わせて見せやすくするための道具です。*アプリはAppleの使用者が多かったため、先にApple用で作成しました。

親子で「見てもOK?」を確認する道具として

筆者の考えたアプリのアイディアでは、Webページを、学習向けとしてそのまま表示する Study、理由を書いて保護者に申請する Ask、現在のモードでは表示しない Block に分けて扱いました。確認が必要なページを開こうとすると、子ども側に「見てもOK?」という画面が出ます。そこで、子どもは学習に必要な理由を書きます。たとえば、「理科の自由研究で、磁石の実験動画を見たいです」「社会の宿題で、昔の道具について調べたいです」「英語の発音を確認したいです」。このように、見る前に理由を書く。それを親に見せる!それだけでも、ただ流れていく視聴とは違います。自分が何のために画面を開くのかを、一度考えるからです。

この「MitemOKey」で特に意識したのは、YouTubeの扱いです。YouTubeを丸ごと許可してしまうと、学習用の一本だけで止めることが難しくなります。そこでMitemOKeyは、YouTube全体を自由に開かせるのではなく、申請対象として扱う運用を想定しています。さらに、保護者が確認した学習用動画だけを、YouTubeの動画ID単位で許可できます。理科の実験動画、社会科の資料動画、英語の発音動画、自由研究の参考動画。必要な動画だけを選んで見せる。そして、Shorts、コメント欄、関連動画、おすすめ動画への脱線を抑える。これは、子どもから学びを奪うためではありません。むしろ、学ぶための時間を守るためです。

いまの子どもたちは、最初から便利な環境の中にいます。分からないことは検索できる。動画で見られる。AIに聞ける。誰かの解説をすぐ読める。それは大きな可能性です。しかし、便利さは成熟を自動的には育てません。自分で調べる。自分で考える。途中で投げ出さない。すぐに刺激へ逃げない。目立つものだけでなく、地味な努力の価値を知る。こうした力は、環境を整えないと育ちにくくなっています。

だから、私はMitemOKeyを単なるアプリとしてではなく、家庭の中で「目的を確認するための道具」として作りました。子どもにネットを使わせないためではなく、ネットに子どもの時間を持っていかれないために。YouTubeを敵にするためではなく、YouTubeを学習の範囲で使えるようにするために。親がすべてを監視するためではなく、親子で目的を確認するために。

このMitemOKeyは、MacのSafari機能拡張としてApp Storeに掲載されています。子どもの調べ学習でYouTubeやWebを使わせたいけれど、Shortsや関連動画への脱線が心配なご家庭は、App Storeをのぞいてみてください。アプリ名は MitemOKey(ミテモーキー/見てもOK?) です。現在はMac版しかありませんが、興味があればApp Store URL:https://apps.apple.com/jp/app/mitemokey/id6795426240?mt=12

資料・出典

  • こども家庭庁「令和7年度 青少年のインターネット利用環境実態調査 調査結果(速報)」:青少年のインターネット利用率、動画視聴、保護者による利用管理などを参照。
  • 第一生命保険株式会社「第37回『大人になったらなりたいもの』調査結果」:子どもの将来像の中に「YouTuber/動画投稿者」が登場していることの参考資料として参照。
  • Google / YouTube Kids ヘルプ:保護者が許可したコンテンツのみを選べる既存機能、およびYouTube Kidsの保護者向け設定の確認資料として参照。
  • MitemOKey 取扱説明書:Study / Ask / Block、申請画面、動画ID単位の許可、Shorts・コメント・関連動画の抑制、Safari拡張としての注意事項を参照。

Comments

No comments yet. Why don’t you start the discussion?

    コメントを残す

    メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です