ストップ「ワクチン差別」次々に生まれる新たな差別、地方自治体の取り組みを追う。

(写真:群馬県渋川市役所ウェブサイト)

 年配の男性が前方から歩道を自転車で走ってくる。スピードを落とさずよける気はなさそう。並行して走る道路に自転車通行帯があるがなぜか男性は歩道を走る。スピードを緩めず「どけどけ!」と言わんばかりの勢いだ。

 全身をグレー系でまとい、銀縁メガネに薄茶のサングラスの平凡なイメージの年配の男性(*一応、高齢者と児童は歩道を走行しても良いことにはなっている)。

 筆者は、歩行者優先の歩道を歩いている。しかし、未然に事故を防ぐためには避けざるを得ない。そこでやむを得ず街路樹へ移動した。土の上で靴が泥んこ。その横をスピードを落とさずすり抜ける年配の男性。「当然だ!」と言わんばかりにこちらを見向きもせず走り去る。筆者が聞きたかったのはひとこと「ありがとう」の言葉である。

 男性はノーマスク。「7月だし、年配の方はワクチン接種したんだろうな・・」など考えながら目的の郵便ポストまで歩く。途中信号待ちで立ち止まった。後から年配の女性歩いて来てすぐ横で止まった。真横に立たれて驚いたがこの女性もノーマスク。

 「あ、ワクチンを接種したのかな?」と考えもつかの間、不機嫌そうな顔で筆者の口元に視線を送る。ご気分わるそうなので自分から少し離れたが、年配の女性はそのタイミングで青に変わった信号とともに足早に横断歩道を渡り始めた。

 さて、最近よく感じるのは大衆があらゆるストレスに晒されたことからくる不寛容。彼等は多分に「自分がルール」と思っているところがある。ネット炎上はそのストレスの発散の場であり、彼等の「自分ルール」の正当化を追認するよう、満足感を与えながら彼等に炎上の燃料を与え煽動するメディアもある。

 筆者の親の世代でも、かなり勉強して教育を受けているはずなのにテレビの情報を鵜呑みにしてうなずき、意見が違うと「そんなことは新聞に書いてない!」とひねくれ者扱いされる事もしばしばあった。

 新聞やテレビ、YouTube動画をみて影響され、同意し、憑依したかのように同じ様な連鎖反応が大多数で起きる「自分ルール」の集団化は怖い!先程の自転車の男性も横断歩道の女性も「自分はあたり前のスタンダードだ!」と認識しているのだろう・・・。

 彼等にとっては自分自身のルールが「当たり前」だから、「自転車で歩道を走るときは歩く人に配慮して下さい。人が多いときは押して歩いて下さい。」といったところで「なんで?」、「ぶつからなきゃいいじゃないか?」とたいていの人は言うだろう。他人のことより「自分ルール」ですから!

 とにかく、会社でも、商店街でも、学校でも、「一方通行の思い込み」で「自分ルール」の集団になった時はとても怖い。感染者差別、自粛警察、マスク警察、今度はワクチン差別だという。

 呆れるほどダメダメな社会!それでもなんとかならないものかと頭を悩ませていたところ、「ワクチン差別やめよう」という群馬・渋川市の啓発活動(施策)が目にとまり、経緯などを取材させていただいたのでここからはその取り組みをご紹介したい。

ストップ「ワクチン差別」チラシ

日本の真ん中から叫ぶ!ストップ「ワクチン差別」

 群馬県は、東は栃木、西は長野、南は埼玉、北は新潟に囲まれた県です。その中の渋川市は丁度真ん中に位置するど真ん中の市です。筆者は長野県と新潟県の県境付近に山荘スタジオがあり、志賀高原を抜け渋川の方まで出掛けて行く事もあったのでとても身近な感じがします。

 この群馬県渋川市で今回、ストップ「ワクチン差別」と題して、新型コロナウイルスのワクチン接種を受けていないことを理由にした不当な差別を防止する取り組みが始まった。ちなみに新型コロナウイルスのワクチンは希望接種ですが、市民へのワクチン接種を推奨している。

 その理由に、市のウェブサイトなどによると、「新型コロナウイルスワクチン接種自体が感染症の収束に向けての効果として期待されている」となっているので非常にニュートラルな考え方だ。

 その上で、「中には体質や持病などの理由でワクチン接種ができない人もいる」と、世の中には接種したくても出来ない人もいることなどと、とても大事なことを伝えている。

 この背景には、職場や地域社会で、コロナウイルス・ワクチンを接種しない人に対して「自分に近づくな!」、「会社に入室するな!」というような、差別的な扱いが増えているからである。

 SNSでも多くみられるが、社会的ストレスから不寛容になりがちで、人それぞれにある「諸事情」を無視し、押しつけの「自分ルール」に当てはめようとする。本来、「それぞれの事情」というものはプライバシーもあり、自らが身をもって経験・体験していなければ人にはなかなか理解されづらい。

 やっかいなのは「自分ルール」の人は他人の意見は尊重しない。なぜならば「自分ルール」だからだ・・・。

 今回取材した渋川市はこうした差別をなくし、誰もが自分らしく、互いに寄り添い、共に生きる社会をつくるため、新型コロナウイルスワクチン接種の強制を求めるなど、接種を受けていない人に対する差別防止の啓発を始めたと伝えている。

 そういったことを含め、ANALOGシンガーソング編集部は渋川市役所にインタビューをした。

群馬県渋川市に対する、新型コロナウイルスワクチン接種に関する差別等の防止施策についてのインタビュー

ア,この「ストップワクチン差別」を開始しようと発案した動機(具体的なきっかけ)をお聞かせください。

渋川市高齢者福祉推進委員会において、委員から若者の間でコロナワクチンハラスメントがあるとニュースになっているという話がありました。市としては新型コロナウイルスワクチン接種を推奨していますが、体質や持病等の理由でワクチンが接種できない人もいます。接種の有無等によるワクチン差別等をなくし、誰もが自分らしく、互いに寄り添い、共に生きる社会を創るため、新型コロナウイルスワクチン接種に関する差別等を防止するための啓発を行うことに決めました。

以下、全インタビュー回答:渋川市役所 総合政策部 政策創造課 企画戦略・共生社会推進係

イ,差別の事前防止であればその背景,すでに差別の事案があればその簡単な事例を簡単にお聞かせください。

新型コロナウイルス陽性者に対して、人権を守るためのシトラスリボンプロジェクトを推進しており、コロナウイルスに関する差別防止の取組を行っています。

ウ,現時点で(ワクチンを)接種した方,しなかった方の比率を簡単に教えてください。

高齢者予約率は、約7割を超えています。

エ,ワクチン(今回のストップ「ワクチン差別」活動)以外にも,(渋川市)日常のこういった人権配慮の取組があれば簡単に教えてください。

・「共生社会実現のまち 渋川市」推進共同宣言を58団体(令和3年7月7日現在)と行っています。 

シトラスリボンプロジェクトに賛同

・パートナーシップ宣誓制度の導入

・障害平等研修の実施

・デートDV防止講座の実施

オ,  渋川市から全国に向け,伝えたいメッセージはありますか?

すべての人がおたがいの人権や尊厳を大切にし、支え合い、誰もが自分らしく生き生きとした人生を送り、さまざまな人々の能力が発揮されている活力ある共生社会実現のまちを目指し、これからも人権に配慮した取組を進めていきたいと思います。

取材協力:渋川市役所 総合政策部 政策創造課 企画戦略・共生社会推進係

 群馬県渋川市は、チラシや広報などを使い、ストップ「ワクチン差別」と呼び掛けるとともに市のホームページなどのあらゆる手段で差別防止を呼びかけている。

 ところで筆者が思うに、群馬県渋川市のような差別対策は、本来日本中もしくは世界中で行われるべきものだと思う。どこの地域も様々な境遇の人々が暮らしており、インターネットの普及で世界中の距離もなくなった。

 他人を尊重し摩擦のない場所(自治体のあるべき姿)をつくる。筆者も住みたくなる場所、そしてそれをふるさとにしたいものである。

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