日本の桜? トランプ氏、ワシントンDC最古の桜の株伐採の噂!?

日本の桜? トランプ氏、ワシントンDC最古の桜の株伐採の噂!?

 小西寛子です。今朝、Xのポストなどで FactPostの「トランプ政権がDC最古の桜の林を、新たなトランプ・ゴルフコース建設のために伐採しようとしている」という投稿をみました。この投稿は、歴史的な桜が現実に再開発の影響を受けうるという重要な問題を捉えています。しかし、現時点で公表されている各資料から見る限り、「桜の古木群を伐採することが正式に決定した」と読むのは早すぎると思います。

 ます、確実に確認できるのは、ワシントンD.C.のEast Potomac Golf Linksで大規模な改修計画が進められていることです。トランプ大統領は2026年6月、同コースの改修工事を9月1日に開始すると表明した。計画には内務長官ダグ・バーガム氏とゴルフ場設計者トム・ファジオ氏が関与しており、既存コースを大規模に再設計し、主要大会の開催も可能な水準へ引き上げる構想が示されている。もっとも、この工事開始予定が、必要な環境・規制上の審査とどのように整合するのかは、なお明確ではありません。

「新しいトランプ私有ゴルフ場」ではありません!?

 この計画を理解するうえで、まず区別すべき点がある。East Potomac Golf Linksは、トランプ氏が新たに所有する私有ゴルフ場ではないことです。East Potomac Park内にある既存の公共ゴルフ施設であり、NPSの文化景観台帳では、土地に対するNPSの権利はFee Simple、すなわち連邦側の完全所有と整理され、一般利用者のアクセスも「Unrestricted」と記載されている。歴史的にも、このコースは1917年以降、公共のレクリエーション施設として機能してきたものです。

 現在、National Links Trustは、NPSが「historic restoration」を開始できる状態になるまでEast Potomac Golf Linksの運営を継続すると公式に発表しています。したがって、この件は「新たなトランプ私有ゴルフ場の建設」というより、連邦所有の既存公共コースをトランプ政権下で大規模改修する計画と表現する方が正確である。

 但し、今後のネーミングについて、昨今のホワイトハウスの考え方に影響される可能性はあります。特に公共施設でありますから、トランプ大統領が自ら言及する場合もあるとおもいます。

歴史的な桜と、現実に存在する伐採リスク

 問題の中心は、改修予定地に歴史的な桜が存在することです。NPSのEast Potomac Park Golf Course文化景観台帳は、White Courseに「historic cherry trees」の群があることを記録し、White Courseのティー付近やフェアウェイ沿いにも歴史的桜があると記している。つまり、問題となっている木々は、単なる装飾的な植栽ではなく、NPS自身が文化景観の歴史的要素として把握している樹木群であります。

 伐採への懸念も、単なる推測ではありません。2026年5月、連邦裁判所のアナ・レイエス判事は、政府に対し、10本を超える樹木を伐採する場合には事前に通知するよう求めた。審理では、NPS側が即時の大規模工事は予定しておらず、安全性評価を行っていると説明したと報じられている。この司法上の対応は、歴史的樹木への影響が実際に争点となっていることを示すものです。

 ただし、この命令は、歴史的な桜の古木群を伐採することが決まった、という意味ではありません。逆に、保全が確定したという意味でもない。現時点で確認できるのは、工事と樹木伐採の可能性が存在し、裁判所がその進行に注意を求めている、というところまでである。

設計図に残る大きな不透明さ

 2026年6月末、トランプ氏がEast Potomacを視察した際に携行していた図面の写真から、従来説明されていた以上に広範な改修構想が示唆されたと報じられた。報道では、その図面上に、半島周辺の自転車道、ミニゴルフ、そしてワシントンで最も古いと紹介される桜の群の扱いが明瞭に示されていないとされた。

 そうです、ここで重要なのは、公開情報が不十分だという点である。現時点では、どの歴史的桜を保存するのか、移植対象はあるのか、伐採予定の木はあるのか、工事による根系・土壌・水位への影響をどう評価するのかを、樹木ごとに確認できる公式資料は公表されていないのです。設計者トム・ファジオ氏は歴史的樹木を保全する意向を示していると報じられていますが、保全意向と、拘束力のある保全計画は別のものであります。

 だからこそ、この件を「デマ」と切り捨てるのも、「伐採決定済み」と断言するのも正確ではありません。今現在確認済みなのは、公共ゴルフ場の大規模改修、歴史的桜の存在、樹木伐採をめぐる訴訟と裁判所の介入です。未確定なのは、問題の古木群を含め、どの木が最終的にどのように扱われるのかの部分です。

East Potomac Parkの桜は日本から来たのか!?

 この問題には、日米関係の象徴としての桜の歴史が重なるものです。NPSによれば、1910年、日本からワシントンへ2,000本の桜が送られたが、害虫や病害が見つかったため、米国農務省の検査を受けて焼却処分された。その後、日本側は改めて3,020本の桜を寄贈し、1912年に横浜からワシントンへ送った。1912年の寄贈は、日本国民から米国民への友好の贈り物として位置づけられています。

 NPSは、1912年の寄贈木のうち、主としてタイダルベイスン周辺に植えられた吉野桜以外の品種と、残りの吉野桜がEast Potomac Parkにも植えられたと説明している。したがって、East Potomac Parkの歴史的桜は、広い意味で、日本からワシントンへ贈られた桜の歴史に直接つながっています。

 このため、East Potomac Parkの桜を単なる都市景観の樹木として扱うことはできない。そこには、日本からの友好の贈り物として始まった歴史、ワシントンの公共空間に根づいた文化的記憶、そして日米関係の象徴としての重みがあるのです。改修計画は、ゴルフ場設計や樹木管理だけの問題ではなく、この歴史をどこまで尊重できるのかという問題でもあります。

1910年の桜の生き残りなのか?

 ただし、現在問題になっているHains Point/East Potomac Golf Course周辺の古木群が、1910年に送られた最初の桜の生存個体であることは、完全には証明されていないのも事実です。NPSは、当初の2,000本のうち約2ダースが昆虫学者による観察のため隔離保存されたという農務省記録に触れ、その後の植栽場所は特定できないとしています。

 NPSは、Hains Point付近の古木が1910年便の生き残りである可能性を支える事情として、大きさ、腐朽や枯れ枝の状態、1912年寄贈の現存吉野桜と一致しないDNA、そして1912年から1965年の日本からの次の寄贈まで他の桜植栽が知られていないことを挙げている。そのうえでNPSは、これらの木が1910年便の「may very well be survivors」、すなわち生存個体である可能性がかなりある、と述べています。NPSはこの歴史的重要性を踏まえ、2006年にこれらを「Witness Trees」に指定しました。

 さて、ここで大切なのは、可能性の強さと確定の違いを消さないことです。私としては、歴史的根拠は強い。しかし、当時の植栽場所の記録が完全ではないため、「1910年寄贈木の生存個体」と断定するのではなく、NPSの留保を保ったまま扱うべきであるのが正しいと思います。

「DC最古の桜並木」という言葉も慎重に使うべき!?

 NPSはEast Potomac Parkのミニゴルフ紹介で、背景に見える桜を「市内でも最も古い日本産観賞桜の一部」と説明している。これは、同地の桜がワシントンの桜史の中で特別に古く、重要な位置を占めることを示す一次情報である。

 ただし、「DC最古の桜並木」あるいは「DC最古の桜林」という最上級表現を、全市の桜を比較した確定的な科学的順位として使うには注意が必要だと思います。NPSの資料は歴史的重要性と古さを明確に示すが、私が確認できた公開資料の範囲では、ワシントンD.C.全域の桜を網羅的に比較し、この群を唯一の最古と確定する調査報告までは確認できません。

 したがって、最も正確な表現は、「ワシントンでも最古級で、1910年の日本からの寄贈便の生存個体である可能性をもつ、歴史的に重要な桜の古木群」である。

今後も問われるのは「保全」という言葉の具体性

 この問題の本質は、伐採がすでに決まったのかどうかという一点だけではないです。公共の再開発計画が、歴史的景観、公共アクセス、日米関係の象徴、そして来歴が完全に記録されていないからこそ慎重な保全を要する古木群と衝突する可能性があることにあるのです。

 計画側が歴史的樹木を守ると述べるなら、対象樹木ごとの位置、樹種、推定樹齢、歴史的評価、根系への影響、移植可能性、伐採予定の有無、代替案、工事段階別の影響評価を公開すべきである。歴史的な桜を守るという抽象的な言葉だけでは足りない。どの木を、どの設計変更によって、どのような法的・技術的手続で残すのか。その中身が、今まさに問われていますね。

小西寛子

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